さんじゅうろうの覚え書き

不治の中二病を患っている中年男『さんじゅうろう』の他愛のない覚え書きです。10年後には立派な黒歴史になっているかもれしない。

『君の名は。』(新海誠監督)を観てきたので、今度こそ感想を書きます

前回のブログで、勢い任せて1953年公開の『君の名は』の感想を書いてしまい、なんとなくだまし討ちをした気分に陥り、その後ろめたさから去る9月1日に新海誠監督の『君の名は。』を観てきました。今回はその感想を書こうと思います。 新海作品は観たことがなかったので、予習の為に『秒速5センチメートル』と『言の葉の庭』に2本を視聴。

さてさて、準備は整った。ネタバレしないと感想が書けないので、ネタバレが気になる方は、この先にご注意くださいませ。

(9月13日補足:全文が長いので目次をつけさせてもらいました)

まず最初に私の立ち位置について説明します

感想を書くに際して、私が新海誠監督作品に対してどのような立ち位置で感想を書いていくのか?をご説明します。私は今まで新海誠監督作品を観たことありません。過去作品はとても評判が良いのですが『アニメファンなら観るべき』とか強い推しにはどうしても引いてしまう性分である事と『雰囲気オシャレ作品』と言うイメージがあり、積極的な視聴を今までしてきませんでした。それでも今作を鑑賞するにあたって、もしかしたら今まで食わず嫌いだったのかもしれないと言う思いと、十二分に楽しむ下調べの為に『秒速5センチメートル』と『言の葉の庭』を昨日立て続けに視聴しました。

この2作品に関して言うと『秒速5センチメートル』は綺麗なMVを見ている印象。『言の葉の庭』は純文学作品を綺麗な背景と共に観た印象です。両作品ともアニメ作品としての出来は良質なもので、以前に思い込んでいた『雰囲気だけ』のイメージは払拭されつつあるのですが、視聴後の内へ内へ内へと篭っていくようなモヤモヤ感は拭い去れなかったです。

これは新海作品を観る上でのお作法、『モノローグで語られる心情に感応する』とか『情景を楽しむ』と言う気持ちが足りなかったからもしれません。そんな気持ちを持ちつつ今回の『君の名は。』を鑑賞し、その感想を書こうとしています。

 

2016年9月1日午前

今日は1日。多くの映画館はファーストDayとして鑑賞料金が安いと言う事、そして一般的には夏休みが終わりキッズ達には学校があるし、その事に加えて1回目の上映ならば人気作といえども人も少なかろうと考えて、朝イチで映画館に出かける事にした。(混雑が苦手なんです…。)

開館前にも関わらず、映画館の入り口にはそこそこの人数がいた。若い女の子のグループや1人で来ている若い女性。小さな女の子を連れた親子連れは『アイカツかな?』と思ったら、『君の名は。』だったり、男同士で来ている若い二人連れ、そしてカップルとカップルとカップルとカップル……。前回、8月1日のファーストDayに観に行った『シン・ゴジラ』とは明らかに違う客層。『シン・ゴジラ』の時の客層はどちらかと言うと成人男性が中心で、『大人の男が遊び場を探して辿り着いた』そんな印象を受けたのだが、今作は間違いなくその時とは違い、中年男性の私にとって、何処と無くアウェイな雰囲気が漂っていた。

2つ並びでカップルが確保したと思わしき座席を避け、外のお客さんと干渉しあわない座席を確保して腰を落ち着ける。おもむろにカバンからスマホを取り出し電源をOFF。カバンを膝の上に置き、準備は万端!さぁ、いつでも来いと身構える。

臨戦態勢になった頃、映画の予告編が始まる。『ええ…キューティーハニーまた実写やるの、自爆行為?』とか『妻夫木聡は相変わらずこの泣き方なのね…』と毒にも薬にもならない感想が頭に浮かぶ。暫くの間、予告編と鑑賞のマナーを観たあと、いよいよ本編の始まりだ。

おっと、ここまでで既に1500文字経過、読んでいる方も『ええから、はよ本編の感想書けや』と、お思いの事と思います。

お待たせしました。いよいよ本編の感想です。

君の名は。』感想、実は1回自爆した

実はこれを書く前に『ストーリーか思い出せる限り書いて、その中に感想を埋め込んでいくスタイル』で書いていったのだが、文字数が10000を超える辺りで『ストーリーをなぞらえて行っても意味なくね?』と言う思いがMAXに達して、ストーリーに感想を埋め込んでいく形の部分は全削除。

流石に勿体無いと感じ一旦は躊躇したのですが、8000字を超えたあたりから特に感想を書くことも無くストーリーだけを記憶でなぞらえていたので、コレなら小説版の『君の名は。』をお薦めしたほうが正解だと思って。三葉が実は三年前に彗星による災害で死んでいたという事実を瀧が知ってしまうあたりまでは頑張って書いていたんだけどね。どうも自分が文章に整合性が取れなくなっていって、AmazonKindle小説版を購入したんだよね、302円で。

これが実に素晴らしいもので映画を観てから読むと、映画のシーンが鮮やかに蘇ってくるので本当にオススメですよ。(勿論、映画を観る前に読むのも良し、でも公式ネタバレ満載だよ)

 

ざっくりと感想を言うと『すごく面白かった』です。

物語がキチンとした段落で分けられているし、物語の根幹が徐々に分かって来て、『そうか…あれはこういう事だったんだ』と思わせてくれるのは観ていて楽しい。

例えば、劇中に出てきた古文の授業。黄昏の語源『誰そ彼』を説明するユキちゃん先生(前日に『言の葉の庭』を観ておいて本当に良かった)に生徒が「カタワレ時じゃないんですか?」と質問する。この『カタワレ』という言葉も糸守の過去の歴史に由来しているのでは無いかと思われる。1200年周期のティアマト彗星がそれこそ1200年前に飛来した時にも割れて糸守の地に隕石湖を造るほどの災害をもたらした可能性とかも考え、1200年後に糸守町に隕石が飛来することも天文学的な偶然では無くて、必然だったのかなぁ…それを後世に伝える為に残したものがカタワレと言う言葉なのかなぁ…と、想いと考察を巡らせてしまいます。

 

前2作品との違いを強く感じた今作

昨日、下調べの意味で観た『秒速5センチメートル』と『言の葉の庭』の2作と今作の違う点はモノローグが減っているという点です。モノローグはそのキャラクターの内面にある心情がわかりやすく、表現手法としてはアリで私も嫌いでは無いのですが、ストーリーを内へ内へ追いやっている印象が拭いきれませんでした。今作はモノローグが全然無い訳ではないのですが、周りとの会話によって心情表現させて行くことが多く、人との繋がりを前2作以上に感じる事が出来ました。新海監督作品はまずその映像美に印象が動いてしまいがちで、ついその映像の印象を強く語られる事が多いですが、今作はそれ以外の部分を多く語れる作品になっていると思います。

『夢』の扱い方がとても良いですね。

これは私達にも経験があると思うのですが、眠っている時になにかものすごい夢を見ても目が覚めると覚えてないとか記憶が曖昧になっていると言うことがあるじゃないですか?

劇中で夢の中の入れ替わりから醒めた時の感覚って、その辺りと同じ感覚だと思うのです。

断片的に覚えているけど、一つにならない感じ。時間が経つに連れ記憶の欠片が崩れていく感じ。ただの『入れ替わり』では無く『夢の中での入れ替わり』として、その忘れていく感覚は誰しもが体験した感覚なんでは無いかなぁ…と思います。それが共感出来る部分です。

結構好きだったのが冒頭の演出

まず冒頭で目覚めた瀧が女の子の体になっていて、困惑するシーンから物語は始まりますが、直ぐに更に翌朝のシーンになり、そこでは入れ替わりが解けていて、三葉の普通の日常が描かれていますね。しかし、昨日の三葉の様子はおかしかったと友人等から聞くことで三葉の不安が募っていきます。これは敢えて瀧が三葉の体に入った状態を描写せず伝聞という形を取ることで、観ている私達にもその不安が共有できる様な、良い演出だと感じました。

圧巻で思わず中年が涙したクライマックスシーン

地球に再接近するティアマト彗星のシーン、これは映画のOPでも観ましたし、予告編でも見ることが出来るのですが、クライマックス、RADWIMPS の 「スパークル」が流れるシーンで映しだされる彗星のシーンは今まで観たものと全く印象が違って見えました。この時点では、もう核から分離された彗星が隕石といて糸守町に直撃することが分かってるので、その状態で見ると、美しい映像がとても悲しいものに感じて、思わず涙腺がヤバイ状態になっていました。地上では未だ三葉達が何とか住民を避難させようとしています。仮に避難が上手く行ったとしても、この糸守の風景が消えてしまうことを避けることは出来ないんだと思うと、たまらない気持ちになりました。

 

考察:夢での入れ替わりは何故引き起こったか?

入れ替わりが起こった原因をボンヤリと考えてみたのだが、まず『誰が引き起こした』と考えた時、まず頭の中に浮かぶのは三葉だ。宮水の家系は元々夢の入れ替わりが起こる体質なのは三葉の祖母が劇中に語っていたが、瀧が入れ替わった時間軸では既に三葉がこの世にいない。

では、一体何が?と思った時に瀧と時間軸を共有しているあるアイテムが頭に浮かぶ。

そう、ご神体に供えられている『三葉の口噛み酒(三年モノ)』だ。

劇中、私が心のなかで『言い値で買おう』と言い続けた『三葉の口噛み酒』だ。

完全にブルセラSHOPの店長の域に達している9歳児、四葉の販売計画に全面的に賛成せざる負えないあの『口噛み酒』だ。

あの口噛み酒は劇中、三葉の半分と表現されている。あの口噛み酒に三葉の心残りや無念の想いが宿り、三年の月日を経て瀧と過去の三葉を繋いだのでは無いかと考える。

だから夢を見せる際に最も大事な部分である『災害』などのワードを瀧から消し去ってしまえたのでは?と考える。それによってもうひとつ感じていた矛盾『君らの世界ってカレンダーとか無いの?問題』も解決する。入れ替わりとは言え、普通に生活していれば、三年間の隔たりがあるのはお互いに知っていてもおかしくない。瀧の体に入っていた時の三葉は奥寺先輩とデートの約束を取付けるが、その際カレンダーくらい見るじゃん。そこで気づかないか?とかスマホの画面だっていつも見てたから、何年だかお互い気づかなかったのか?とか言う疑問も三葉の口噛み酒からの意思がそれを打ち消していたと考えると、『ご都合展開』と思っていた部分に多少なりとも説明がつくような気がした。あくまでそんな気がしたのである。

幾つかの残念な点

『君らカレンダーないの?問題』は私の中での解釈で少しだけ解決したのだが、2点ほどまだ残念だなぁと思っている箇所がある。一点目は『奥寺先輩の立ち位置』瀧にとっても三葉にとってもミステリアスな年上の魅力を放っていた奥寺先輩は鑑賞中にもう少し物語の根幹に関わってくる存在だと思っていたのだが、普通の年上の女性の立ち位置で終始したのが少しだけ残念。三葉の日常に祖父の一葉がいるように、瀧の日常においても奥寺先輩の存在がもう少し物語の重要な部分に絡んでくれていると良かったかも知れない。……まぁ、今のままでも魅力的な大人の女性ではあるのだが……。

もう一つは『おいおい、あんなグダグダの状態で良く被害者0に出来ましたな問題』隕石が落ちてくるまでにあまり時間が無いと思われる時に結構グダグダになっていて、私が糸守の住人だったら『高校に避難かそのまま待機なのかはっきりしてくれ』と思うだろう。そんな状況で被害者0を出すのは難しい。きっとそこには三葉の説得が届き、心を動かされた父親の強権力が存在したんだろうと思うが、その辺りの描写がもう少し欲しかった気がする。勿論、その描画なかったことにより、『結局どうなったの?ハラハラ…』と気持ちになれたのは確かなのだが、それでももう少しその辺りの描写があっても良かったかなぁ…と思ったりする。

 

この映画は複数回みると良いかもしれないが…。

一回の映画鑑賞だけで全てを知ることは出来ない。結構見落としている部分も多いと感じたので、複数回観ることによって補完出来る部分が多いような気がした。

例えば、瀧の落書きとか2人が交わしていたルールの詳細とか、隕石が落ちた後の数々の報道部分など、初回の鑑賞ではなかなか追いつかないと思う。複数回鑑賞はキツイわ…と思われる方には先に話した『小説 君の名は。』がオススメ。文庫で買っても600円弱、Kindleならば302円!この小説は実に細かい。そして監督自ら書いているだけに映画にとても忠実です。映画を観た後なら1時間もあればほぼ読みきれると思う。

映画にはなかった心理描写とか、逆に映画にあって、小説にはないシーンもあるので、それを探して見るのも面白い。小説版、マジでオススメです。

(注意:9月13日補足=この記事を書いていいる時点でKindle版小説君の名は。の価格が302円でしたが、9月13日現在は544円になっています。)

 

 

私は小説版の口噛み酒(くどい?)の描写が大変に楽しく読めた。

『もぐもぐもぐ。もぐもぐ。ああ、もう。もぐもぐもぐ。そろそろ出さなきゃ。』

この描写、すごく好き。

 

ああ、ここでアフィのリンクとか貼ると、私もウィンウィンなんだろうなぁ…。Google AdSense申請中だからなぁ。下手なことは出来ないしなぁ…。まぁ、それを越えてオススメしたいので良いか…。(心の声、ダダ漏れ注意)

 

最後に

1回ざっと書いて、どうしても納得出来ずに7000文字ほど削って、新たに書きなおして、ほぼ二日がかりなのだが、まだまだ書き足りないと思っています。三葉が瀧に会いに行った時の話とかね。もうちょっと書きたいなぁ…と思うのだが、書き出すとキリがないので一旦ここで締める事にします。シン・ゴジラも円盤欲しいけど、こっちもすごく欲しいなぁ…と思いました。2時間ほどの夢の様な時間も時間が経つとやっぱり忘れて行っちゃいますからね、そう思うと円盤でその記憶を留めておきたい気持ちでいっぱいです。

 

ズバリを言うと新海誠作品の中で『君の名は。』は現時点での最高傑作だと思います。

現時点といったのはこの先の作品で、更にこれを乗り越えて行く才能を持っているんだなぁと感じました。

実は今回、敢えて言及を避けていた部分があります。それは新海作品特有の『緻密な作画と光の融合した美しい背景』という部分を敢えて押し出さずに書いて見ようと思った事です。

新海監督作品では、既にそれは当たり前の事だと思ったからです。それ以外の部分で新海監督の今後を更に期待できるものにしたいなぁ…と。

正直、細かいツッコミもしましたが、そんな事を言うのは無粋かなぁ…と思わせる作品だったのは間違いないです。

あ、言い忘れましたが自分が女性の体に入れ替わったら、やっぱりおっぱいは揉みます。

それが男のロマンだと思うのです。

 

アニメ映画の未来もまだまだ明るいな、と感じたところでお開きにさせて頂きます。

 

(了)