さんじゅうろうの覚え書き

不治の中二病を患っている中年男『さんじゅうろう』の他愛のない覚え書きです。10年後には立派な黒歴史になっているかもれしない。

『宇宙人東京に現わる』を観た。

先日、昔の『君の名は』を観たせいか、自分が生まれる前の映画に少々興味が出てしまい。
Amazonプライムビデオで新たなる刺激を探していました。
そして見つけた1本の映画。今回はこちら映画を鑑賞しましたので、感想を書こうと思います。


『宇宙人東京に現わる』

1956年(昭和31年)1月に公開された。この2年前である1954年(昭和29年)に初の特撮映画『ゴジラ』が公開されているが、こちらは日本初のカラー空想特撮映画となっていて、邦画初の『地球外生命体』との接触が描かれている。

【ストーリー】
各地で謎の円盤型飛行物体が頻繁に目撃されるようになり、その正体について、学者や世間の感心が高まる頃、更に異形の怪物が各地で目撃される様になる。
怪物の正体は地球から遙か遠くの星からやって来た『パイラ星人』ヒトデの様な星型の体、中心に青く光る大きな目を持っており、それを目撃した人間は恐怖で逃げ出してしまう。
そしてその事にパイラ星人も困惑していた。実は彼らは危害を与えるために地球を訪れたのではなく、むしろその逆、人類を脅威から救うために遥か彼方からやって来たのだ。

なかなか人類とのコンタクトが叶わないパイラ星人達は思案の末に自身らの科学力を持って人間の体に変身し、人類との接触を図ろうとする。帝国劇場の人気スターである『青空ひかり』に似せた風貌に変身したパイラ星人は、記憶喪失の女として湖に浮かんでいるところを物語のキーマンでもある松田博士らに救助され、保護される。『天野銀子』と名付けられた女は、その異常な身体能力によって、人類では無いことを見抜かれる。

銀子は地球にやって来た理由を博士らに語る。
ある日、パイラ星から構造のよく似た唯一の星である地球を観測しいてると、原爆による巨大な爆発がいくつも起こっているのを発見し、このままでは地球が滅びてしまうと言う警告をするために地球に向かったと言う。
パイラ星も何世紀かの昔に同じような事があったが、危険性を悟り、原水爆の力を平和利用することで、高度な文明を造り上げてきた事、そして、現在松田博士が研究している『ウリウム101』はその原水爆すら凌駕する危険を持っていると警告する。
ウリウムはパイル星にもかつて存在したが、危険性を悟り、オリウムと言う物質として平和利用したことも高度な文明を創りあげた大きな一因だと話す。


そして銀子は地球に迫る『もう一つの脅威』について語る。現在、地球に向かって『新天体R』と言う星が接近し、このままでは近いうちに地球と激突、地球は滅びてしまう。
それを阻止するためには全世界の原水爆を『R』に向けて発射し、星を破壊しなければならないと。

「なぜ?原水爆を持っていない日本と接触したのか?」と言う問いに「持っている国がいくら説得しても無理」だと答える。そしてその役割が出来るのは唯一の被爆国である日本以外では無理だと言う。

かくして、博士らは世界に全ての原水爆に向けることを提案するのだが、各国の反応は薄く、協力的ではなかった。しかし、地球から『R』の存在を確認出来るようになる頃には各国も協力しないわけに行かなくなり、一斉に世界中の原水爆を発射する事になる。

しかし世界中の原水爆を持ってしても『R』を破壊することは叶わなかった。
こうなると希望は松田博士の研究していたウリウム101に託されるのだが、松田博士は予てより付け狙われていた『技術を他国に売り渡そうとする組織』によって拉致・監禁されていた。

刻々と迫る滅亡の時、やがてそれは地球の異常気象や地殻変動に繋がっていく、組織は松田博士を縛り付けたまま逃げてしまい、放置されたままの博士は為す術もなかった。

そんな時、再びパイラ星人たちが現れる。以前に松田博士に渡して置いた指輪で博士の場所を特定して救出し、ウリウムの方程式を聞き出し、それを宇宙船で精製して爆弾を作り『R』に向かって発射した。

『R』は表面がひび割れ、やがて四散し、消滅。 
地球は救われたのだ。


【感想】

うん、いろいろ都合よく展開して、ツッコミどころがあるけど、娯楽映画だしなぁ
。まず鑑賞前の宇宙人のイメージは完全に侵略者だったよ。これは意表を突かれたね。
まさかここまで友好的とは……(笑)

しかし、地球人はパイラ星人をみて、その異形に恐怖したが、一方のパイラ星人も地球人の外見的なイメージには良い物を持っていない。
『顔の真ん中が突き出た醜い容姿』とか言ってたし、極めつけは画像のセリフ『こんな醜悪な顔を持っているとは可哀想な種族だ』とまで言われるとか……。
パイラ星人が人間に変身するときも仲間内で「こんな辛い役目、誰が一体するんだ」とかも言ってな。
この辺りは地球上でも存在する種族間のズレを皮肉っているような気がする。

ところでパイラ星人は『過去にウリウムを持っていたのに今更なんで精製方法を聞かないといけないのか?』
これについては、『過去に持っていたが、今では決別した技術なので、パイラ星人もよく知らない』で説明出来る。
ちなみにパイラ星人って岡本太郎さんのデザインなんだそうだ。
私は『かわいい』と思う。

Rの接近に際してその絶望とRが破壊された後の復活を小動物を使って表現したシーンは演出的に上手だなぁ…と感じた。


この映画には明確な2つのテーマが存在する。一つは『反核兵器』でゴジラもそうだったように、原水爆の兵器利用に対するアンチテーゼが唱えられている。

もう一つは『原子力エネルギーの平和利用の推進』である。この辺りは当時の世相を色濃く映し出している。
終戦後、日本は連合国によって原子力の研究が禁止されていたが、1952年(昭和27年)サンフランシスコ講和条約の発効に基づき原子力研究が解禁される。
その後、1954年(昭和29年)には国会に原子力開発予算が提出されており、翌年1955年(昭和30年)には原子力基本法が成立している。
勿論、裏には色々と『利権』などのあったのかもしれないが(憶測です)『大量破壊兵器だった核を平和利用に』という旗印のもと、そのような気運はドンドン高まって行ったんだろうな……と思ったりする。

2016年現在にこんな映画が公開されたら、市民団体がプラカード持って映画館に押しかけて来そうな…そんなあぶない想像もしてしまう。
少なくても反原発派の方にはオススメできない映画である。



最後にどうでも良い感想を一つ述べると、劇中で宴会のシーンがあったんだけど、当時の宴会シーンは本当に楽しいそうだなぁ…と感じた。
古い映画には今ではあまり見ることが出来ない生活の風景が随所にあり、そういうものを失ってしまった現代に少しだけ息苦しさを感じるのは
自分が歳をとってしまったからなのかなぁ…と、ふと思うことがある。