さんじゅうろうの覚え書き

不治の中二病を患っている中年男『さんじゅうろう』の他愛のない覚え書きです。10年後には立派な黒歴史になっているかもれしない。

私のささやかな焼肉にまつわるお話

夏は焼肉にビール!!最高!!(私はお酒飲めないんですけどね)

肉か……そういえば、このところ貧乏が板についてしまって、焼肉どころか外食もご無沙汰だなぁ。肉厚のあるステーキとか食べたいなぁ。

子供の頃、私にとって焼肉とは◯◯◯◯だった。

子供の頃、家族揃って月に一度あるかないかの頻度で外食に出かけていた。その中でも焼肉屋に出かけるのが1番の楽しみだった。

当時、焼肉屋といえば今の様にファミリー向けのチェーン店など無く、1軒構えの個人店が多くて、店内には決まって外人さんのヌードポスターが貼られていたりして、子供心にそれが気になって、気になってしょうがなかったのを記憶しています。

 

そういえば父は焼肉屋に出かける前、決まって私と弟にこの様に言っていたのを思い出す。

「おーい、今日はとんちゃん食べに行くぞ~」……と。

とんちゃんと言うのはご存知の方も多いと思いますが、味噌だれで和えた豚のホルモンです。

私は子供の頃、トンチャンこそが焼肉であり、焼肉といえばトンチャンが最上の肉だと信じ込んでいました。

コリコリに焼いたとんちゃんと一口食べ、白いご飯をかきこむ。それが至福の時でした。

ただ、ひとつ気になった事がありました。

兄弟2人分のロースターにはいっぱいのとんちゃんが乗っかっていたのですが、両親の網の上には明らかに違う赤い肉が乗っかっています。

それはどんな肉か?と聞くと両親は決まって『子供が食べると大変な事になる肉だ』と説明されました。

そうか大変な事になるのか……と、思いながらも興味があったので食べてみたいと言うと、きまって一皿とんちゃんを追加で注文してくれて、私の興味を何とかその謎の肉から遠ざけようとしていました。

あらかたお腹一杯になる頃には網の上の肉も幾つか炭のようになっていたのですが、勿体無いとばかりにそれらも口に頬張り、帰り道についてもガムの様に噛んでいた記憶があります。

それが、私が成人するまでの焼肉の思い出だった気がします。

あれ?これは自分の知ってる焼肉じゃないぞ…

そんな私も、成人して就職した。ある日、会社の先輩上司が歓迎会と称して私を含む数名の社員を焼肉店に誘ってくれました。社会人になってから焼肉店に行くのは初めてでした。

「好きなモノ頼んでいいぞ」と先輩上司に言われ、私はメニューを見たのですが、そこには知らない単語が沢山並んでいました。いま考えると恥ずかしい話なのですが、当時の私はロースもカルビも知らなかったのです。当然、タンもミノもハツも知りません。何が何だか分からないまま時間が過ぎていき、最初に先輩上司や同僚が注文した第一陣がテーブルに並び始めた頃。一つだけ知ってる部位をメニューの中に発見……ホルモン。そう豚のホルモン、そしてその下に小さく『とんちゃん』と書いてある。

「じゃあ、とんちゃんとライスの中で…」

と私が注文しようとすると……。

「お、そんなのでいいのか?」と既に肉を網に乗せ始めている先輩上司。

「いや、実はそれしか知らなくて」正直に答える自分に少し引かれ気味に

「マジか!ならタン喰え、タン!」と謎の部位を勧めてくる先輩上司。

「タンってなんですか?」と質問する私。

「タンは舌だ喰え!」と何枚かの肉を私の小皿に乗せてくる。

「え?舌ってベロのことですか?」思わず聞き返す自分。

「そうそう、ベロだ、喰え」と言われるがままに口に1枚運ぶ。

 

なにこれ…めっちゃジューシーやん…肉が自分の舌に絡みつく、なんなん?なんなの?

コレがいわゆる『大人のキスって奴なの?』と舌に絡まる肉を堪能。

個人的につい『大人のキス』と言うフレーズが気に入ってしまい、連発していた為に同僚の女性陣の何か汚いものでも見るような冷めた視線を全身で受けてしまうという事態にまで発展したほどです。

その後も『カルビィィィィーーーー』とか『ロォォォォォーーーーーーーースッ!!!!』などの波状攻撃。

完全にマクロスのおけるゼントラーディ軍が初めて歌と言うものに遭遇したかのような状態。

いわゆる『デカルチャーーーーーーーーー!!!』な状態に陥って、焼肉ってこんなにエキサイトな物なんだと知らしめられました。

あと、私以外の他の皆さんが白米を注文しないのにも少し驚いたので、それも聞いてみると。

「お腹いっぱいになって肉を堪能出来ない」と言う応えに思わず『なるほど』と、納得してしまいました。

その時に気がついたのです。あの幼少のみぎりに両親から言われてた

『赤い肉は子供が食べたら大変な事になる』の大変な事とは家庭のお財布事情が大変な事になると言う事、そして白米を常に傍らに置かれていたのは、それでお腹を一杯にして肉の消費量を極力抑えるという理由だった事を…。

確かに食べ盛りの子供がロースやカルビやタン塩の味を知ってしまったら、予算的にかなりオーバーしてしまうだろうし、白米お腹いっぱい作戦も大人の事情ってやつだったんだと。

でも今でもとんちゃんと白米の組み合わせは最強だと思っています。

とんちゃんを食べると家族で行った焼肉屋の事をいつも思い出して、少しだけ楽しい気分になれるのです。